1 「医療体操史」構想にむけた基礎資料を作成するため、文献資料および映像・聞き取りなどの現地調査による資料の収集を行なった。 2 3年度計画のうち初年度にあたる12年度は、おもに、新しいスポーツ観として「医療的な営みとしてのスポーツ活動」を提起すべく研究は進められた。 3 まず、「治療」概念ならびに「スポーツ」概念を拡大し、広義の治療として身体へのさまざまな働きかけや加工をとりあげた。そしてこれらが人間の生においてどのような考えのもとで、どのように進められたかの具体例をあげた。 4 たとえば、19世紀のスパいわゆる温泉文化と身体運動と医療の関連から、新しい「医療体操」への視点が提起された。D.G.M.シュレーバーのKaltwasser-Heilmethode in ihren Grenzen und ihrem wahren Werthe(1842)には、健康的なくらしかた(Lebensweise)としての身体運動が示されていた。そしてこれがひとつの治療法として位置づけられていたことがわかった。 5 ここには従来の薬剤による治療からの治療法上の変化がみられ、Heilmittellehreという新しい治療法の「学」が展開されてもいる。 6 続いて、身体的治癒のみならず、人間の生の充足感にもかかわる健康観・治療観にたって、自己意識を明確化し、人間の豊かな生を全うする過程において、スポーツにおける身体・運動感覚がもつ「からだほぐし」要素がいかに役立ってきたかを歴史的な資料のなかで明らかにすることが13・14年度の課題である。
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