研究概要 |
本研究では,運動トレーニングが若年女性の運動時における前腕血流量(FBF)反応に及ぼす影響を明らかにするため,健康な若年運動鍛錬者(T群)9名および同非鍛錬者(U群)10名に対し,各人の卵胞期に前半30分間が33℃,後半30分が36℃(いずれも50%rh)環境下で60分間の運動実験を実施した。その結果,皮膚血管拡張平均体温(T^^-_b)閾値はT群がU群より有意に低く,FBFvs. T^^-_bから求めた回帰直線の勾配および37.7℃時のFBFはT群が有意に大きかったことから,運動トレーニングが皮膚血管拡張を中枢および末梢で改善することが示唆された。さらに,運動トレーニングに伴う皮膚血流量の末梢改善メカニズムを精査するために,T群10名とU群10名に対し,各人の卵胞期に前半20分間が25℃,後半20分間が30℃(いずれも45%rh)環境下で下肢温浴時(42℃)を負荷し,皮膚血流量(LDF)と発汗量(m_<sw>)の対応関係を身体多部位で検討した。T群で観察された同一T^^-_bに対する高いLDFから,運動トレーニングは皮膚血管拡張能を亢進ずることが示唆された。このトレーニング効果は皮膚血管収縮神経のtoneの低下が大きいことに起因した。なお,これらのトレーニング効果には身体部位差が存在した。しかし,運動トレーニングはLDF/m_<sw>を小さくした。これは,運動トレーニングが能動的血管拡張システムの感受性を低下したとも解釈できるが,女性の運動トレーニング効果が皮膚血管拡張能の亢進より発汗能の亢進で顕著に観察されることを報告した我々の先行研究結果に基づくと,本研究で用いた解析方法では,運動トレーニングによる能動的血管拡張システム感受性の亢進をマスクした可能性も考えられ、今後更なる検討が必要である。
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