研究概要 |
本研究では,(1)性周期・性差が寒冷下での皮膚血管収縮運動に及ぼす影響を明らかにするため、最小限の衣類を着用した健康な若年成人女性7名と若年成人男性(M群)7名に対し,環境温度を28℃(相対湿度40%)から15℃に30分間で漸次下降させ,その後15℃を30分間保つ寒冷刺激を負荷した(下降期)。その結果、女性は男性よりも皮膚血管収縮を亢進させずに厚い皮下脂肪厚による優れた断熱性で寒冷に対処することが示唆された。女性は皮膚血管収縮平均体温閾値が黄体中期に卵胞中期より高い方へシフトすることから皮膚血管収縮に関与する中枢機構が性周期で修飾されることが推察された。しかし,皮膚血管収縮に関与する末梢機構は性周期・性により修飾されないことが示唆された。次に,(2)「冷え性」申告者の耐寒反応の特性を明らかにするため,9名の一般若年成人女性と8名の「冷え性」と申告した女性に対し,実験(1)の下降期後に30分間で15℃から28℃へ漸次上昇させる上昇期を付加した条件下で寒冷反応を比較検討した。「冷え性」申告者は,全身寒冷暴露時の皮膚血管収縮反応より,その後の環境温上昇時において鈍化した皮膚血管拡張反応が観察され,その反応は手および前腕で顕著だった。さらに,(3)「冷え性」申告者の寒冷血管拡張反応を手中指氷水浸漬実験で検討した。その結果,「冷え性」申告者の寒冷血管拡張反応が一般女性より劣ったことから,実験(2)の上昇期に観察された「冷え性」申告者の劣った血管拡張反応は,動静脈吻合拡張の鈍化が起因するものと推察された。
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