研究概要 |
幼児の身体組成を明確にする容易で簡便な方法は開発されていない.このような現状に置いて比較的容易に計測できる身長と体重からなる体格指数が,学校現場では広く用いられている.中でもBMIは,体重や体脂肪量とも高い相関を示すため,肥満を判定する指数として世界的にも広く用いられている.一般的に,小児期のBMIは男女とも,新生児から4-5歳頃まで減少し,その後思春期が終わる頃まで増大する.近年,BMIの最下点の出現(BMI-rebound)が早い小児は,成人期の過体重や肥満につながる確率が高いという報告がある.しかし,小児期では,長育の盛んな時期と量育の盛んな時期が存在するため,個人の肥満判定にBMIを用いる場合は,種々の問題が生じる. 本研究は,3歳〜8歳までの日本人小児期における身体組成を縦断的に研究幼児肥満に関する特徴を身体組成とBMIを絡め,BMIをFMIとFFMIに分類し,それらを比較検討した.その結果,以下のような結果が得られた. 1.本研究においても男女とも3歳から5歳までBMIは急激な変化を示さないが,その後8歳まで経年的に急増する. 2.小児前期のFFMIは,男女とも4歳で最低値を示し,小児中期のFFMIは,男児で0.05kg/m^2,女児では0.35kg/m^2増加し,女児における小児中期の変化量は,小児前期と比較して有意に高い変化量を示した. 3.FMIの変化量は,男女の小児前期では3歳から4歳まで増大し,小児中期では男女とも7歳から8歳にかけて結いに増大した(男児;0.5kg/m^2 vs 0.9kg/m^2,女児;0.2kg/m^2 vs 0.5kg/m^2)が,2群間の差は女児では有意(p<0.05)であり,男児の変化量に有意差は認められなかった. 以上の結果から本研究の結論は,女児の小児前期におけるBMIの減少は,主にFFMIの減少によるものであり,FMIの減少によるものではないと考えられ,小児中期のBMIの増加は,FFMIとFMIの両方が影響しているように推察される.また,男児の小児前期におけるBMIの無変化は,FMIの増加とFFMIの減少が相殺された結果であり,男児の小児中期のBMIの急激な増加は,FFMIよりFMIの影響を強く受けているように思われる.
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