研究概要 |
今日,授業研究における方法論的課題を模索する中で実践者と研究者の関係のあり方に焦点が向けられ,「当事者の視点」を重視する研究デザインの提起や「カンファレンス」「共同的な観察体制」の必要性が指摘されている.本研究では,小学校1.2年生の体育授業を対象とした参加観察(participant observation)による授業観察を実施し,当日の授業に関わった反省と次の授業以降の展開に関わった課題についての検討を行った授業検討会における実践者と参加観察者の発言を分析した.単元進行における展開に関わった実践者の意思決定に注目した平成13年度の報告にくわえ,本年度の報告では,共同研究者(co-researcher)としての「参加観察者」の授業づくりの関わる省察内容の変容過程と検討会で話題となった課題との関係について検討を加えることとした. その結果,参加観察者の発言には,実践者の実践構想に関わった特定の個人の技能習熟やグループでの仲間関係についての観察内容を実践者に伝えようとする意図(具体的場面の提示,イメージの鮮明化)をもっと推察されるものが顕著であった.しかし,一方で,実践者が行うことに対する理解や課題の共有を深めようとすればするほど観察視野が制限され,特定の子どもやグループの活動に注目することによって得られた印象をもとに授業づくりに関わった情報を取捨選択する傾向もみられた.今後は,同僚性の構築に向けた教師(実践者-研究者)相互の関係性に注目し,教師相互が共有する信念や志向性,知識や思考様式,またそこでの教師同士のやりとりを媒介する物や出来事,言葉などの道具が,教師文化の中でどのように生まれ共有されてきているのかという観点についても考察していきたいと考える.
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