札幌・仙台・広島・福岡の4都市の1990年代における産業動向について、「事業所・企業調査報告」にある事業所従業者のデータを用いて比較検討した。その結果、次の諸点が明らかになった。 1)1980年代後半以降における福岡の事業所従業者の成長率は4都市のなかで安定して高かった。とくに、1990年代後半には、経済不況により全国的に事業所従業者(民営事業所)が大幅に減少したが、広域中心都市なかでは福岡の減少率はもっとも小さかった(福岡-2.7%、仙台-5.9%、広島-7.6%、札幌-9.9%、東京、-10.2%)。 2)4広域中心都市の産業構成は類似し、広島の製造業比率が相対的に高い点を除くと顕著な差が認められない。ただし、福岡の場合、卸売業、金融・保険業、事業所サービス業などの業務系の事業所の構成比率が他の3都市に比べて若干高い。 3)福岡・仙台の事業所全体に占める支所比率が53%前後を占めて、札幌・広島の比率を10%程度上回る。 4)4都市の支所比率は依然として高まる傾向にある。支所の増加のなかで、福岡、仙台では中央企業よりも地方企業の支所配置が活発化している。 4)福岡と仙台の事業所タイプ別構成を比較すると、福岡は仙台に比べて本所比率が相対的に高く、また増加傾向にある。 5)事業所従業者の動向からは、1990年代の福岡の成長が4都市のなかでは相対的に高かったことは確認できるが、このことが4広域中心都市の中心性の格差を結果させる動きに発展するものかは判定できない。
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