研究概要 |
本申請研究は先の経済的中枢管理機能から西ヨーロッパ各国の都市体系の分析をふまえて,西ヨーロッパにおける国境をこえた都市体系を研究することを目的としていた。 都市のレベルで再度重要なポイントを提示すれば,(i)西ヨーロッパという1つの地域内においても,距離は大きな意味をもっていること,これは利便性とおそらく親近感の反映であろう。(ii)その国あるいはその都市自体は多くの企業をもたないものの,数多くのbranch companyの立地都市になっている都市が数多く存在する。(マドリッド・リスボン・ダブリン・ウィーン・オスロ)。(iii)これらの都市はいずれも首都であるが,国によっては,首都が多くのbranch companyをもたない国がある(ドイツ・スイス・イタリア)。ドイツ・スイスは連邦制国家であり,その特徴を反映している。ドイツにおいては東西統一後の首都が同国の最大都市ベルリンに戻ったことにより,連邦制国家の中の卓越した都市としての将来を歩むか否かが興味深い。イタリアは連邦制国家ではないにもかかわらず,首都ローマの地位はミラノに比べて圧倒的に低いが,国内に南北問題をかかえるといわれる事情があるものと予想される。 本研究により,西ヨーロッパにおいては国境をこえた都市間結合,都市システムが存在することを抽出できたが,資料上の制約からbranchオフィスと生産現場を明確に区分することができなかった。結果として,それを経済的中枢管理機能からの分析とは不充分なものとならざるをえず,本研究はオフィスと生産現場の両面からみた-大企業の施設配置からみた都市間結合の状況と理解される。今後は,両施設を分けたうえ,「金融」すなわち銀行の動向を加えればより一層,都市システムの姿が明確にとらえられ,分析対象企業の枠をもう少し拡大することも有意義な結果をえることになると予想される。
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