本研究は、1999年5月に開通したしまなみ海道の地域インパクトの諸相を明らかにする目的で、開通に伴う島民の移動性を定量的に把握し、観光客のしまなみ海道を含む本四架橋3ルートの観光ルートとしての評価を明らかにし、さらには、まちづくりの一環として開通と同時に設立された「瀬戸内しまなみ大学」の活動と評価を行った。その結果、(1)しまなみ海道の開通は全体として島民の移動性を向上させたが逆に低下した地区も少なくないこと、(2)開通と同時に開設された高速バスは、片側クローズドドア方式のために期待ほどには島民の移動性を向上させていないこと、しかしこの方式を解除すれば移動性はかなり向上すること、(3)しまなみ海道の最大の観光価値は「橋と海と島がおりなす景観」であり、自歩道の存在がその価値をより高めていること、(4)本四架橋の3ルートの観光評価ではしまなみ海道が卓越した評価を有していること、その要因は島伝いのルートとも関係する島並の自然・景観、そして島の文化であること、(5)しまなみ大学は、「地域文化の発掘・再評価・創造」や「地域イメージの向上」に一定の役割を果たしていると地元自治体から評価されているが、大学の目的の一つである自治体間の連携の点では評価が低く、今後のしまなみ大学の運営に対する問題点の一つであること、等の諸点が明らかとなった。
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