目的 本研究の目的は、東京都都心部における低未利用地の動向を手掛かりとして、都心空間の変容を明らかにするとともに、低末利用地の有効利用の可能性を探ることである。 方法 都心部の空間利用の中でも低末利用地に着目し、1997年当時のデータと、本研究で新たに収集されるデータとを比較検討することで都心空間の変容を明らかにした。報告者による再度の現地調査を行ってデータベースを作成し、1987年と2000年の2時点、及びぞれらの間の変化をGIS分析し、解析・考察を行った。 結果 事例地域の低未利用地のうち、その多くが首都高速都心環状線の以東の地域に点在している。これは低地価地域への集中が見てとれるが、複雑に入り組んだブロックの内側とともに比較的広幅員な道路に面した地点にも分布している。代表的な低未利用地であるコイン式駐車場の平均規模は165m2で、6.5台の駐車スペースをもつ。これらの所有者の変遷を登記簿により確認すると、1984年は法人が4、個人が9であったが、2000年にはそれぞれ10、3と一転しており、土地所有の法人化が進展している。個人から法人への所有権の移転は1980年代後半の地価高騰期に生じており、移転原因も売買や相続物納、相続後の競売売却が主なもので、都心部の異常な地価高騰がその背景にある。また、1987年当時の従前の王地利用は、2階建ての低層建築物での印刷土場や飲食店を兼用した住宅、倉庫、などであり、低次な利用が低末利用地として残存していることが明らかとなった。
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