事例地域の低未利用地のうち、その多くが首都高速都心環状線の以東の地域に点在している。これは低地価地域への集中が見てとれるが、複雑に入り組んだブロックの内側とともに比較的広幅員な道路に面した地点にも分布している。代表的な低未利用地であるコイン式駐車場の平均規模は165m2で、6.5台の駐車スペースをもつ。これらの所有者の変遷を登記簿により確認すると、1984年は法人が4、個人が9であっが、2000年にはそれぞれ10、3と一転しており、土地所有の法人化が進展している。 1980年代末のバブル経済期における土地投機が活発化し、これはすなわち夜間人口の減少にともなう都心部の空洞化・高齢化を発生させ、都心部における居住環境を悪化させた。高齢者の街と化し、都心部で長年生活を送ってきた高齢者にとっては必ずしも快適な生活空間ではなくなった。個人から法人への所有権の移転は1980年代後半の地価高騰期に生じており、移転原因も売買や相続物納、相続後の競売売却が主なもので、都心部の異常な地価高騰がその背景にある。また、1987年当時の従前の土地利用は、2階建ての低層建築物での印刷工場や飲食店を兼用した住宅、倉庫、などであり、低次な利用が低未利用地として残存していることが明らかとなった。 バブル経済崩壊後の不動産不況により、より条件の悪い土地が売れ残り、コイン式駐車場や空地などの低未利用地が生まれた。これらの低未利用地は一部まとまった規模の大きさを持つものの、大部分はブロックの内側に点在している。そのため、低未利用地の統合や一体的な整備、また集約化はきわめて困難な状況にある。さらに権利関係の複雑性が土地の高度利用の阻害要因となっている。
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