食糧難時代の国民の欲求は画一的で、国政への期待があった。しかし、物質的豊かさの実現で国民の欲求は多様化し、街づくりの考えも多種・多様になった。同時に、財政難と地方分権化の流れで、中央政府の役割も変化してきた。そのため、物質文明の構築をめざし、基盤整備の確保に公的セクターが過剰介入し、ハード偏重で画一的な20世紀を代表するアメリカ型都市は、21世紀を生き抜く都市形態といえない。そのため、地域に根ざした新しい都市づくり政策・手法の開発を目指した。 21世紀の都市は、情報化・国際化に対応すべく広く社会に認知されるべく大都市化を求められる。他方で、これまでの都心を中心に階層ネットワーク型都市構造から、階層関係・上下関係のない都市内都市といえる自立性の高い多数の分都市化を水平ネットワークする都市構造へ転換させる必要がある。「大都市化・分都市化」の視点がそれで、階層性の存在を前提とした従来の都市内中心地研究では、今日の都市構造を正確に捉えられないことが判明した。 分都市化は研究代表者の造語である。この概念はダウンサイジング(分都市化)と開放的水平ネットワーク(大都市化)を旨とするコンピュータ社会の都市構造研究には欠かせない。また、都市地理学の応用として、特にコンパクトな歩けるまちづくり、都心再生、都市における危機管理システムの構築、地域性豊かな土地利用制度の導入、高速交通環境の整備に伴う地域政策、首都機能移転のための研究にも有用であり、都市政策立案への寄与も大といえる。「大都市化・分都市化」は、分権型社会の21世紀の都市構造研究・ヒューマンスケールの街づくりにとって重要な視点である。
|