1.本研究は、20世紀前半期に行われた東亜同文書院生による旧満州地域のフィールドワークの記録をもとに、当地域における地域システムを見出し、それにともなう地域像の特性と変容を明らかにしようとした。 2.本年度は20世紀前半期のうち、満州事変以降における旧満州地域の地域社会システムとそこから浮かび上がる地域像を明らかにしようとした。その結果、以下のような結果を得た。 (1)満州事変とそれにつづく満州国の成立にともない、中央集権的な管理体制が敷かれ、人口や民族、生産、交通、郵政など基本データが整備され、あわせて、全国のネットワーク化のための基盤整備がすすめられた。それは中央と地方とのネットワークをより密にすることになり、地方に副次的中心地を生み、成長させることになった。 (2)日本からの農業移民が、既存の山東方面からの移民と棲み分ける形で、満州北部・中部・東部へ入植し、新たな開拓前線を拡大した。 (3)満鉄からを中心とした輸送ネットワークが整備され、そのさい、石炭や鉄鉱などの地下資源開発との結合、大豆など農産物供給との結合が一層強化された。
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