研究概要 |
本年度は、1910年代からの樺太産業化に関わる研究を進めることに重点を置いた。1つは産業資本の進出の実態を不凍港湾選定事業と併せて明らかにする研究、いま1つはそれを底辺で支えた朝鮮人労働者の実態を樺太の地域性と関連づけて明らかにする研究である。 まず、前者はかねてから進めてきており、その完成に向けての補足調査および成果の公表を行った。報告は、日本地理学会近代日本の地域形成研究グループ(於・法政大学)および日本植民地研究会全国大会(於・立教大学)において、「樺太の産業化と本斗の不凍港選定」として口頭発表を行った。そして、それらの集会での討論を経て内容を再検討の後に成稿し、日本植民地研究会機関誌『日本植民地研究』に投稿中である。 つぎにそうした産業化を支えた底辺労働力に注目する必要から樺太の朝鮮人労働者の実態を明らかにする研究を進めつつある。函館市立函館図書館所蔵の樺太庁警察部『昭和二年十月 第三輯 樺太在留朝鮮人-班』を軸に、北海道大学および道内各図書館、外務省外交史料館、さらには日本国内の各関連図書館等で調査を実施した。来年度には、これに関わるサハリンでの現地調査を実施したいと考えている。 また、台湾・中央研究院台湾史研究所「被殖民都市與建築」國際學術研討會(於・中央研究院)において、"Reclamation Work in Karafuto as a Japanese Settlment colony and the construction of its Capital City,Toyohara"と題する報告と討論を行った。これを成稿化した論文は、審査の後に中国語訳の上で台湾で出版されることになっている。
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