研究概要 |
本年度は、昨年度の樺太産業化に関わる研究を承け、それに関わる労働力がどのように調達されたのかを明らかにすることに重点を置いた。1つは昨年度から研究を進めてきた底辺労働力としての朝鮮人労働者の問題であり、いま1つは樺太拓殖政策の究極的目標となっていた日本人農業移民の誘致に関する問題である。 まず、前者は昨年から研究を進めており、今年度は樺太の朝鮮人社会が形成された主要都市を訪問して現地調査を実施することと、外務省外交史料館および防衛庁防衛研究所図書館所蔵の関連公文書を閲覧・収集することに重点を置いた。その成果は2002年春の社会経済史学会全国大会で「戦前期樺太における朝鮮人社会の形成」として自由論題報告での口頭発表を予定しており、その後学術雑誌に論文として投稿予定である。 つぎに日本人農業移民の誘致については、樺太拓殖政策と最も密接に関わり、本研究課題の中でも中核的位置を占める問題である。代表者は大きく二期に分けて研究を進めることを考えている。すなわち、日露戦後領有期〜1920年代半ばと1920年代以降であり,とりあえず本年度は前者に重点を置くこととした。函館市立函館図書館や北海道立文書館等での史料収集を継続すると同時に現地調査も実施した。とりあえず、その成果を2002年春の歴史地理学会シンポジュウム「移民・植民の歴史地理」において、「1910年代以前の樺太開拓と移民」として報告し、討論を経た後にシンポジュウム論文としてまとめる予定である。 また、本年度は、外務省外交史料館、防衛庁防衛研究所図書館、函館市立函館図書館、北海道立文書館等での史料調査と共に、ロシアサハリン州で関連都市の現地調査の一方、A.クージン氏をはじめ現地研究者と情報交換を行った。さらに論文「樺太の産業化と不凍港選定」が『日本植民地研究』第13号に掲載された。
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