本年度は、「交付申請書」に記入したように、樺太拓殖計画に関する幅広い資料収集を心掛けた。まず、(1)国立国会図書館所蔵『樺太日日新聞』の1930年代分を閲覧し、拓殖計画に関わる記事を幅広く収集することがあり、本年度はそのうちの約半分(1935年頃まで)を完了した。つぎに、数年来継続して実施している(2)北海道立文書館所蔵の『樺太庁文書』の閲覧・撮影であり、本年度で全体の約4分の3程度を終了した。また昨年度までに撮影したものの整理も実施した。その結果、最終年度に当たる次年度で(1)の残り半分の閲覧・収集に努めると同時に、(2)の失敗分の再度の撮影が必要となる。また、(2)の作業で札幌を訪問した際に、北海道大学農学部に『樺太拓殖計画委員会議録』が所蔵されているとの情報を得て収集した。これらによって拓殖計画研究の論点が定まりつつあり、次年度に再度のサハリン現地調査が必要になる可能性もありうる(現在のところ未定)。 ついで、これまでの調査を踏まえた研究発表は、「交付申請書」に記載した2件共に無事終了することができた。まず、2002年5月の第71回社会経済史学会全国大会(於・和歌山大学)で「戦間期樺太における朝鮮人社会の形成-「在日」朝鮮人史研究の空間性をめぐって-」(報告要旨は社会経済史学会第71回全国大会実行委員会『第71回全国大会報告要旨』27〜28頁所載)として報告した。ついで同年同月の第45回歴史地理学会大会シンポジウム報告「移民・植民の歴史地理」(於・和歌山市民会館)において「農業移民に見る樺太と北海道-外地の実質性と形式性をめぐって-」報告要旨は歴史地理学会『歴史地理学』第45巻4号掲載予定)として報告した。なお、これら両論文は各々同題によって社会経済史学『社会経済史学』巻号未定、歴史地理学会『歴史地理学』第45巻3号への掲載が決定しており、いずれも2003年中には刊行される。
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