研究概要 |
最近英語圏では新しい地域地理学やマッシーの「地理学の重要性」が注目されるが,ドイツでは,近代末期の社会存在論に適合し社会科学を目指した人文地理学の研究としてヴァーレンによる『日常的地域形成の社会地理学』が注目を浴びている。いうまでもなく,そのなかでは地理学にとって基本的な空間や地域の概念についても検討されているので,今年度はまずヴァーレンの地理学を検討することにした。8月下旬にはドイツを訪ね,ヴァーレンはブラジルへ出張中で会えなかったが,ブロートフォーゲル,モイスブルガー,ヴァルデンガらと会い,意見交換を行い,ドイツ地理学の研究動向について貴重な知識をえた。それとともに,多くの文献をコピーすることができた。帰国後は,4月以降取り組んできたモイスブルガー編著『ドイツにおける行為重視の社会地理学』の紹介原稿に新しい知識を追加して,地誌研年報に投稿した。その後はヴァーレン著『日常的地域形成の社会地理学』第1巻の抄訳に取り組み,現在やっと脱稿したところである。この仕事が予定よりも大幅に遅れたため,ドイツで集めた文献の整理は進んでいない。今後,空間概念や地域概念を整理して,6月開催の地理科学学会にて報告を予定している。 なお,中国地方の県庁を訪ねたのは各県の総合計画を知るためで,ヴァーレンが重視する計画地域による地域形成の問題を考察するためである。
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