研究概要 |
本研究は,最近欧米諸国の地理学において活発に論議されている空間や地域の概念に関する議論を紹介することを目的とするが,私のこれまでの研究との関わりもあってドィツ語圏地理学の研究動向を中心に考察した。2000年8月に11日間ドイツを訪問し研究者との意見交換や文献収集を行い,その研究成果を2001年度地理科学学会大会(2001年6月3日,広島大学)において「現代社会と人文地理学における空間・地域概念」と題して発表した。その後の研究を加えてこれまで発表したのは「研究発表」の4点と「地理科学」へ投稿中の「人文地理学における空間概念の展開-ドイツ語圏を中心に-」である。ベノ・ヴァーレンの著書の紹介はドイツ語圏地理学の新しい動きを示すものとして重要であり,本研究と密接な関係があるので,本研究に含めることにした。本研究においては地域概念と空間概念の展開が中心であるが,現実の地域や空間がいかなる状況にあり,いかなる変化を遂げつつあるか,いかに認識すべきかを考察するために,地域システムとしての中国地方を取り上げた。その結果,住民の日常生活は従来と本質的には変化していないことが判明した。そのため,現代の地域をどのようにとらえるべきかを第4論文で考察した。私の意図した研究のすべてが完成しているわけではないが,わが国ではこうした研究が遅れているので,英語圏地理学の動向を含めで今後著書にまとめることを計画している。
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