石灰岩片を用いた溶食量の測定は1992年から開始し、2002年度は10年目の最終年度に相当した。2002年度はこれまで同様に、北海道から阿武隈、秋吉台、四国、龍河洞、南大東において、溶食量の測定とCO_2濃度の測定を行い、水収支の算出をした。その結果、本年はこれまでの10年間の観測のうち最も乾燥し、水不足量が西日本で最も大きく、とりわけ南大東で最大であった。このことは溶食量の測定値にも反映しており、観測以来最少であった。本年は夏の乾燥時のCO_2濃度も低かった。また、空中と地中の溶食量はこれまでの湿潤年では4倍から5倍の差があったが、2002年度は2倍しか差が生じないことがわかった。すなわち、2002年度のような乾燥年には空中と地中の溶食量に大きな差が生じないことがわかった。 過去9年間の結果と2002年度の結果を考慮し、10年間の総量を明らかにした。この値を用いて各地のカルスト化の速度を出すことができる。また、特異な乾燥年、湿潤年の溶食量を用いて、カルスト地形を作るためのこれまでの古気候もまた明らかにできるだろうことがわかった。
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