1 資料収集状況 本年度は9世紀から16世紀の間の、日々の天候記録を収集することに多くの時間を割いた。資料は、すべて刊本・ならびに影印本によった。資料数は500を超えるが、その大部分は近畿地方中部に集中している。現在、その中でとくに記録内容の多いものを中心に、約150の資料について天候記録の収集を完了した。これらの記録に基いて、可能な時代から月毎の天気日表を作成中である。時代によって、全く記録の現存しない期間があり、千年余に亘る連続資料を得ることは出来ないが、それぞれの世紀の気候傾向を推察するに必要な資料は確保できる見通しである。近世資料の補完的な収集作業はほぼ終了し、FD収録の作業を開始したところである。 2 本年度に得られた結果 梅雨期の現れ方を15世紀初頭まで遡って天気表から考察してみると、20世紀に到る600年間、殆ど変化の無いことが解った。すなわち、入梅日・出梅日ともに、各世紀または各半世紀についての平均日を求めてみると、各期間相互の間に有意差は認められず、梅雨現象が極めて安定した季節現象であることが認められる。但し、20世紀後半に少し変化が現れており、これが近年の人為的影響によるものか否かは、今後検討する課題である。 3 今後の予定 (1)中世の天候記録収集を早急に進め、10世紀以後の毎日の天候記録を集成し、データベース構築の準備にかかる。(2)梅雨期の降水量・台風期の襲来台風数・冬季の寒暖状況等について、できるだけ定量化した過去千年の気候復元を行いたい。(3)既存の成果との比較、気候変動メカニズムの検討、将来の気候変動予測等も実現させたい。
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