冬季の寒冷と夏季の高温多湿気候を兼ね備えた地方の風土適合型住宅は、どのような機能を備えるべきか、またそのような住宅で人々はどのように住まい、住居を管理し、どのような問題点を抱えているのか。これを近年急速に秋田県内に普及しはじめた高断熱高気密住宅によって明らかにした。伝統的工法の住宅に住んできた人々は、寒さを炬燵やストーブなどの部分暖房に頼ってしのいできた。それ以外の寒さ対策はもっぱら厚着であった。新しい性能を備えた住宅は従来とは異なる管理を必要とする。そして性能の維持には電気、ガス、灯油などのエネルギー消費を必然化する。これらについて室内環境の理学的計測(温湿度やカビ結露等の発生状況、微生物採取等)と、人々の行動・住まい方(着装や清掃管理)及び住まい手側の評価、性能維持に関わる経済的負担状況について調査し考察した。結果はこの種の住宅居住が人々の暮らし方を急激に変えたこと、冬でも家の中が何処でも暖かいことを高く評価し、かつてのような冬季の厚着は姿を消した。ただし、着装は単に温度調節機能だけではない文化的価値表現も含む。そのため高齢者ほど季節ごとの着装に差を示す結果となった。また理学的観察と住まい方の関係では、室内での洗濯物干しや動植物の存在、及び清掃行為と相関を示し、この種の住宅における管理の大切さを示した。しかし青少年の住環境管理への関与は薄く、清掃行為も毎日行うものではなくなっている。光熱費等エネルギー消費支出は、全国的な傾向よりも絶対額では多いものの、住居面積の単位当たりではそれほど掛かり増しはない。ただし住居面積そのものが拡大しているため、負担額は大きい。また、開発間もない住宅であるため、性能にムラが多く、居住者は加湿器や除湿器、補助暖房機に冷房用機器等を多様に購入し、対応している。初発商品である住宅の持つリスクのほとんどは購入者の負担でカバーされているのが現状である。ただし居住者は、冬の暖かさを筆頭にこの種の住宅の性能に高い評価を与えている。
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