「家」制度の時代は、平均寿命が短く、後継ぎが結婚と同時に親と同居したため、夫婦のみで暮らす期間はほとんどなかったが、近年では、平均寿命の伸長と出生児数の減少、子どもと同居する高齢者が減少したことなどから、夫婦のみで暮らす期間が長期化している。老年期への移行を目前にひかえた高年期において、これまでの夫婦関係を仕切り直し、関係性の再構築を行うことは、充実した老年期を生きるうえで不可欠である。以上のような問題意識から、高年期夫婦を対象に、以下の諸点を明らかにすることを目的とした。1.夫婦の関係性の再構築尺度を作成し、その再構築状況を把握する。2.夫婦の関係性の再構築に関連する要因を明らかにする。調査は、高崎市および前橋市の選挙人名簿から妻が50代である夫婦を1500組無作為に抽出し、郵送法により実施した。有効回収数は妻436票(29.1%)、夫388票(25.9%)であった。以下、主な結果について述べる。 1.ケーススタディや先行研究を参考に夫婦の関係性の再構築を測る10項目(ポジティブ7項目とネガティブ3項目)の尺度を作成した。選択肢は「40代より強く(多く)なった」「変わらない(40代も今もそう思う)」「変わらない(40代も今もそう思わない)」「40代より弱く(少なく)なった」である。ポジティブ項目では肯定する割合が高いが、ネガティブ項目では「変わらない(40代も今もそう思わない)」とする割合が高かった。ネガティブ項目では、妻の方が一貫して肯定する割合が高くなっている。とくに、「家庭内における夫と妻の役割分担のあり方に不満がある」では、妻の37.8%が肯定しているのに対し、夫のその割合は18.8%で、妻の認識とは開きがあった。2.夫婦の関係性の再構築得点に影響する要因として、夫、妻共に「結婚に対する評価」「夫婦の個別化意識」「就寝形態」「夫の母親と妻の関係」(嫁姑関係)などが明らかになった。嫁姑関係については、夫、妻共に、「よかった(あるいはよい)」と評価している方が、「その他」に比べて再構築得点が高くなっている。夫婦関係に夫の母親との関係が影響していることは、日本の家族関係に家意識的な要素が根強く残っていることを物語っている。
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