1.目的 子育て終了後、夫婦の一方が死亡するまでの期間は2-30年に及ぶ。この間をサクセスフルに生きていくためには、夫婦のそれぞれがパーソナルネットワークを形成して交流をすると共に配偶者との間に親和的関係を築くことが課題となる。本年度の研究は以下の諸点を目的とした。 (1)夫および妻のパーソナルネットワークの現状(規模・種類・交流内容)をとらえる。 (2)パーソナルネットワークの現状と夫婦の情緒的統合の関連を明らかにする。 (3)パーソナルネットワークおよび夫婦の情緒的統合と夫婦それぞれのウェルビーイングとの関連を明らかにする。 2.調査方法と対象者 調査は、前橋市と高崎市の選挙人名簿から無作為抽出した妻が50代(2000年時)の夫婦で、2000年調査(1500組・3000名対象)で「次回調査拒否」と意思表示した者(143組・286名)を除く1357組・2714名を対象に郵送法で実施した。調査時期は、2002年10月。回収数は708票、有効回収数は704票(妻361票・夫343票)であった。夫婦セットは261組、妻のみ101票、夫のみ81票となっている。平均年齢は、妻56.8歳、夫59.4歳である。 3.分析結果 以下に示すのは妻361票・夫343票の分析結果である (1)日頃なにかと頼りにし、親しくしている人数(パーソナルネットワーク数)を職場、近隣、友人、親族の4領域に分けて聞いた。親族では妻の人数の方が多いが、その他の領域では夫の人数の方が多い。4領域の総数は夫の方が多い(夫11.93人、妻10.78人)。(2)パーソナルネットワーク総数と夫婦の情緒的統合得点の間には、夫・妻ともに、正の相関が確認された。領域別では、夫・妻ともに、近隣ネットワーク数と夫婦の情緒的統合得点の間に正の相関があった。(3)夫婦単位の付き合いでは、夫・妻ともに、ある方が夫婦の情緒的統合得点が有意に高い。(4)パーソナルネットワーク総数とウェルビーイング得点の間にも、夫・妻ともに、正の相関が確認された。 以上から、家族以外の親しい人々との関係形成は、中高年期男女の夫婦関係やウェルビーイングに有意な影響を及ぼしていることが明らかになった。
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