本研究は、温冷感評価の低下や皮膚水分量の低下が危倶される高齢者の温熱環境に着目し、高齢者居住住宅において温熱環境の詳細な実態測定から、特に冬季暖房時の低湿度環境の改善を検討することを目的としている。平成13年度に実施した研究実績の概要は以下のとおりである。 1)新潟市と長岡市における高齢者世帯12戸の戸建て住宅を対象に、実測調査を春季と夏季に行い、前年度実施した実測結果と合わせて検討を加えた。 2)季節による各住宅内の温熱環境のばらつきは様々であり、冬季におけるばらつきが最も大きいことが明らかとなった。このような温熱環境の影響要素として、住宅の断熱気密性能や冷暖房設備の運転状況の他に、家の間取りや住まい方などが挙げられた。 3)冬季における人体周辺温度の変動幅は、居住者の空間移動に伴う温度変化の影響を受け、大きな値を示した。 4)住宅内の湿度は夏季に最も高く冬に最も低い。冬季において住宅によるばらつきが最も大きく、多くの住宅内相対湿度は40%以上で、絶対湿度は低い値を示した。 5)ほとんどの居住者が居間の湿度環境や皮膚及び喉に対して乾燥や湿潤を感じていないが、冬季に湿度が低い住宅では乾燥感を訴える居住者がいた。しかし、皮膚水分量や水分摂取量との明確な関係は認められなかった。 6)冬季の湿度環境の異なる3住宅を対象に、加湿器運転による湿度環境の変化について実測調査した。その結果、加湿前後の重量絶対湿度やその変動は、周壁の吸放湿性や室温を変化させる要素が各住戸により異なることが影響し、加湿効果は様々であった。しかし、居住者の居室での乾湿感や喉の乾き感及び皮膚水分量に加湿効果が認められた。
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