本研究の目的は2つあり、1つは、母子のままごと遊びを分析し、子どもが生活文化を体得する過程を明らかにすることである。他の1つは、保育園児のままごと遊びを分析し、子ども間で生活文化の共有化がどのように図られるかを明らかにすることである。 目的1の対象者は、1歳児とその母親44組であり、子どもが3歳になるまで継続研究を行った。目的2の対象児は、2-6歳の保育園児16名である。母子のままごと遊びは、対象児の誕生日の前後2週間以内に観察室で行われ、保育園児のままごと遊びは、保育園のままごとコーナーで任意に行われ、いずれもビデオに収録された。これらのビデオ映像をスロット及びスクリプトの観点から分析し、次の結果を得た。 1.生活文化の体得過程:飲食に関するスクリプトの総表出数及びスクリプトを構成するスロット数は、子どもの年齢の上昇に伴い顕著に増加した。1歳時のスロットの獲得は、食べる行為に直接関連するものが中心となっていた。2歳時は食べる行為に付随する感謝・賞賛など、文化的色彩の強いスロットに拡大した。3歳時にはスクリプトの構造化が進むことが明らかになった。また、母親が子どもと同じスロットを表出することが、ままごと遊びの展開要件となることが明らかになり、子どもの生活文化体得に重要な機能を持つことが示唆された。 2.保育園児の生活文化の共有化:保育園児のままごと遊びでは、スロットの行為的側面の共有だけでなく、意味の共有を図り、進行スロットを表出することがままごと遊びを継続する要件となることが明らかになった。
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