金沢市では、中心市街地の人口の空洞化が大きな問題となっており、中心市街地を定住の場として魅力ある住環境にすることが重要だと思われる。しかし実際は、まちなかの魅力の向上(例えば伝統的町並み保存、緑化推進、文化施設の整備、商業環境の向上、観光イベントの開催など)や渋滞緩和などが中心で、居住関係としては助成金交付による定住促進が主な施策であり、日常生活の居住環境の問題には細かく対処していない(平成10〜14年度金沢市実施事業より)。そこで本研究では、特に居住環境のあり方が生活の質に大きく関わるであろう、高齢者・子ども・女性にとっての中心市街地居住の問題点やあり方について検討している。 高齢化する中心市街地において、要介護高齢者が住み続けられる居住環境を模索するため、本年度は特に高齢者施設の先進事例などの観察調査を実施した。この結果をふまえて11月に金沢市内の特別養護老人ホーム9箇所の観察調査、および4箇所の入居高齢者への面接調査を実施したところ、施設職員と入居高齢者との意識のずれがみられ、職員は高齢者の代弁者ではないことなど根本的な問題が明らかになり、中心市街地居住に関わる調査の対象者や方法を再考しなければならないことがわかった(次年度へ繰り越し)。本年度は平行して、郊外住宅地居住者が高齢化した時、交通の利便性が高く、生活・文化・商業関連施設の充実した中心市街地に転居することが想定される。この可能性を探るため調査を実施した。調査対象は金沢市のベッドタウンとして最大規模である松任市千代野ニユータウン居住者で、236部回収した。その結果、現住地への愛着があり定住希望は80%にものぼった。しかし、転居希望者の24.4%が交通の利便性の高い地域への転居を希望しており、40代以降高齢になるほどこれを理由とする転居希望の割合が増加する傾向がみられるなどの結果が得られた。
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