金沢市では、中心市街地の人口の空洞化が大きな問題となっており、中心市街地を定住の場として力ある環境にすることは重要である。しかし、実際はまちなかの魅力向上(例えば伝統的町並み保存、緑化推進、文化施設の整備、商業環境の向上、観光イベントの開催など)や、渋滞緩和などが中心で、居住関係としては助成金交付による定住促進が主な施策であり、日常生活の居住環境の問題や、都心居住者の住要求には細かく対処していない。そこで本研究では、特に居住環境のあり方が生活の質に大きく関わるであろう、高齢者・子ども・女性にとっての中心市街地居住の問題点やあり方について検討している。 今年度は女性の生活・視点から検討を行った。女性の住まい方は、家族規模の縮小、少子高齢化、労働力率の上昇などに影響され、家族のあり方に大きく規定される。都心に居住することの意味も男性とは異なると予想される。中心市街地に供給されている住居は、土地の制約から郊外に供給されている住居型の規模を小さくしたものである。サービスつき住居など集住の利点をいかす住居型が模索されているが、本研究では家族のあり方から平面型の検討を中心に行った。そこで金沢市内に居住する夫婦200組に対し調査票調査を実施した(平成15年11月実施)。夫・妻ともに回答の得られた159組、合計318票を有効回答とし、集計分析を行った。その結果は以下のようである。基本属性は、妻の平均年齢は44才、夫46才、平均家族人数は4人である。全体的に家族共同体志向がみられるものの、調査対象者は標準的な家族構成であるにもかかわらず、特に妻に潜在的な個人化・個別化の意向がみられた。これは家族の解体傾向ではなく、家族共用の部屋や夫婦寝室とは別の、妻専用の空間確保要求であると推察できる。明確な結果は得られなかったが、特に中心市街地では、郊外型住居とは異なる住宅供給がなされるべきであろう。
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