ウエストベルトの伸長特性に応じた適切な寸法を明らかにし、締め心地を予測する妥当な式の誘導を目的として、ベルト芯として2〜5cm幅のゴムテープ、ベルト布として厚さおよび伸び率の異なる市販の布20種を用いて各種ウエストベルトを製作した。ゴムテープに対してベルト布の長さの比が1.0〜3.0のベルト256種、比較のため伸び率の小さいインサイドベルト使用のベルト28種、ゴムテープおよびインサイドベルトを含む292種のウエストベルトを、被験者23名のウエストライン5箇所に衣服圧を測定するためのエアパックを貼付した状態で巻き、立位および座位姿勢における締め心地の評価を行った。そして、ベルト寸法とウエスト寸法の差をゆるみとして求めた。 布の非線形性とヒステリシスを精密かつ容易に計測できるKES-FBシステムを用いて、ウエストベルトの引張り特性、厚さおよび圧縮特性を計測し、ゴムテープに対してベルト布が長くなるほど伸長荷重-伸びひずみ曲線、圧縮荷重-圧縮ひずみ曲線は複雑な曲線を描き、伸び率、引張り仕事量、引張りレジリエンス、厚さおよび圧縮仕事量は増加する傾向を示した。「締め心地がよい」と感じる衣服圧は個人差がみられ、後ろ中心を除いて0.5〜1kPaを示し、0.5kPa程度の変化に対して締め心地は変化した。締め心地のよいゆるみは、ベルトが厚いほど、幅は広いほど多く必要とするが、厚さおよび幅が近似している場合には伸び率の大きいものは少ない傾向を示した。同一のベルト布では、必要とされるゆるみは厚さの増加傾向にもかかわらず、ゴムテープに対するベルト布の長さの比1.5にかけて一旦減少する傾向が認められた。また、細く伸縮性のあるベルトでは締め心地に対する許容範囲の広いことが数量的に明らかとなった。そして、ウエストベルトの幅、伸び率、厚さ、圧縮率、圧縮レジリエンス、着用者のウエスト寸法、体側におけるウエストライン上下傾斜角度を用いて、締め心地のよいゆるみを予測する見通しが得られた。
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