本研究は、全国の異なる気候風土や生活様式の発展とともに育まれてきた地域の住まいづくりの伝統や生活文化を再評価するため、古民家再生の事例調査・分析を通じて自然環境と調和した民家の居住空間の特性や住まい方の実態を明らかにすることを目的としている。今年度の主な研究実績は以下の通りである。1.雑誌・書籍・論文・インターネットのWWW等より、北海道、高知、福岡、広島、兵庫、福島、大分、石川、山梨県など全国各地の民家再生・保存・活用に関する多様な取り組みを調査し、データベースを作成した。2.民家再生に取り組んでいる団体(日本民家再生リサイクル協会や山口県建築士会など)や民間事業者を対象に聞き取り調査を行い、活動状況や民家再生の問題点・課題等を把握した。3.全国における民家ストックを把握するため、平成10年住宅・土地統計調査の都道府県別建築時期別住宅数から民家のストック量を概算した。4.山梨県における民家の地域分布や構造・間取りの特徴等を把握するため、県内市町村の郷土史や建築学会論文等から過去の民家調査事例を収集するとともに、住宅地図や地形図等を用いて集落分布の空間特性を検討した。5.住宅マスタープランを策定した全国の自治体を対象に住宅マスタープラン本報告書を収集し、地域の住文化継承や民家活用システムなど地域に根ざした住宅施策の取り組みについて調査した。6.以上の検討結果を踏まえ、来年度は民家再生に取り組む事業者、再生民家居住者、自治体の3者を対象にアンケート調査を実施することとし、そのための調査内容の予備的検討を行った。
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