本研究は、気候風土や生活様式の発展とともに育まれてきた地域の住まいづくりの伝統や生活文化を再評価するため「民家再生」を取り上げ、主として再生民家居住者に対するアンケート調査から自然環境と調和した民家の住空間特性や住まい方の実態を明らかにすることを目的としている。本年度の主な研究実績は以下の通りである。1.昨年度に引き続き、雑誌・書籍・WWW等を使って全国の民家再生事例を収集した。2.各地で民家再生に取り組んでいる建築家および工務店を対象に現地調査を行った(山形、群馬、高知、熊本、大分)。住文化の視点から民家再生を捉え、居住者の声を聞きながら地域に根ざした民家再生のあり方を追求していることを明らかにした。3.全国の再生民家居住者238世帯を対象にアンケート調査を行い、民家再生に至るプロセス、情報収集・設計・工事内容、民家再生の評価、再生前後の住まい方の変容等を把握した。民家再生は工事費用の調達・合意形成、業者選びなど多くの課題を持つものの、住まいや住生活のあり方、住文化について問い直すきっかけとなっていること、建築主と業者のパートナーシップによって地域の実情にあわせた多様な民家再生がありうることを明らかにした。4.山梨県芦川村および早川町の茅葺き民家集落を調査し、屋敷構えや民家の構造・材料、屋根形式の地域的特徴を明らかにした。5.学校教育における地域性をいかした住教育プログラムへの活用を目的として、石和町の再生民家・杉原家をモデルにペーパークラフトを作成した。6.2年間の研究成果を取りまとめた研究成果報告書を作成した。
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