研究概要 |
身体的レベルでは元気で自立した日常生活をおくる高齢者の夕暮れから夜間(薄明視〜暗所視)における視知覚情報を補完し、日常行動をサポートする色彩視環境の整備を目的とした。 色の属性間効果:独自の夜間視力検査器を作製した。視野角10°,調光が可能な3種類の独立した光源(白色,昼光色,電球色)と3本の移動桿指標を有した装置で、各指標の移動距離は±400mmであり、1mm単位で指標位置を測定できる。立体刺激として5種類の円柱(高さ:30mm,直径:20mm〜60mm)を用いた。刺激の色彩はJISによる安全色彩に近似の赤(8.4R 3.9/15.3),青(4.2PB 3.3/9.0),黄(1.1Y 7.4/13.1)と、灰(N6.5)の4色を調製した。規定条件下で移動桿を前後させ、基準の立体刺激と移動する立体刺激が同位置に並んだと被験者が認識した時の刺激間の距離(視認誤差)を求める方法により実験を行なった。 色の様相間効果:色相,明度,彩度の異なる色票(40mm×40mm,49枚)を刺激として,高齢者の色に対する軽重感,温冷感のほか,明暗感,硬軟感などについても検討した。 前進してくる刺激,後退する刺激のいずれも基準点以遠で同位置と認識する傾向が認められた。また、小立体刺激(直径:20mm)の視認誤差が比較的大きい。黄および灰の立体刺激は赤および青に比べ、視認誤差が大きくなる傾向が認められた。検査器内壁を灰の立体刺激と同じ色度で調製していることから、環境(背景)色彩の明度が刺激の視認誤差(遠近感)に影響を与えたと考えられる。白色および昼光色の光源下に比べ、電球色光源下における視認誤差が小さい場合もあることから、高齢者の視環境において、光色は視認性に影響を及ぼさない。薄暗い夕方や日没後の視環境(約501_xの暗所)において、高齢者の視認性に顕著な低下は認められない。高齢者における色の軽重感ならびに温冷感は近似の傾向(高明度,低彩度)を示した。ただし、高彩度の暖色系(赤,黄赤,黄,黄緑)は、軽重感では分類保留群に、温冷感では「温かい」群に分類されている。
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