研究概要 |
衣服の感性品質のなかで,多くの衣服で重視されているフィット感を分析した.衣服のフィット感には,着用状態での衣服のゆとり量,つまり,衣服の仕上げ寸法と着用者の身体寸法の差が影響する.女子学生70名をパネラーとして数種の衣服のゆとり量を測定した昨年のデータを用い,パネラー個々人によって嗜好するゆとり量に違いがあるかどうかを分析した. その結果,個々人によってそのゆとり量に違いがあることが統計的に確認された.各パネラーがフィットすると評定したサイズのブラウス,セーター,プルオーバー,トレーナー,ポロシャツのバスト部のゆとり量を求め,ゆとり量の衣服間の相関係数をパネラーを観測回数として算出したところ,いずれの衣服のゆとり量間にも有意な相関が認められた.このことは,ある衣服に対してゆとり量の大きなサイズを選定したパネラーは,他の衣服に対してもゆとり量の大きなサイズを選定する傾向のあることを意味している. 次に,他者から見たフィット感を実験的に検討した.実験に供したのは,ダーツの位置のみが異なる上衣5種,および素材の異なる上衣3種(いずれもバストの仕上げ寸法は同じ)であり,これらの上衣を人台に着用させた状態でバスト部の仕上げ寸法の見え方の違いを一対比較法を用いて測定した.前者のダーツ位置のみが異なる5種の上衣間では,仕上げ寸法の大小に関して統計的に意味のある判定がなされた組合わせは少数であった.後者の素材の異なる上衣の仕上げ寸法の大小については,観察される角度(正面と側面)によって異なった結果が得られた. 既製服では,サイズ表示が同じであっても仕上げ寸法が大きく異なっている実態にあり,消費者がフィットするサイズの衣服を選択するのは容易ではない.これまでの本研究を基に,フィットするサイズの衣服の選択を支援する消費者教育教材を作成するつもりである.
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