平成12年度の研究計画は、家庭内における家族の物的資源と人的資源のマネージメントに焦点をあてて、借金トラブルの家族の生活への波及とそこで何が問題になっているかを明確にすることであった。 12年度研究実績の第一は、多重債務問題を自助、互助・共助、公助の中で考察したことである。多重債務者の発生原因を生活リスクと捉え、その生活リスクの回避、予防、軽減、分散を、自助としての生活管理スキルだけでなく、互助・共助、さらに公助の中で複数の安全網を準備することが国民全体の安心感に繋がることについて言及した。(「多重債務問題からみた生活のセイフティネット」:(日本家政学会誌429、Vol.52、No.1、2001) 研究実績の第二は、将来的に多重債務者の金銭に関する価値観を探るためにFurnhamのMoney Behavior and Beliefs Scaleを用いて、大学生の調査(日・米・韓比較)を行ったことである。(Asian Consumer and Family Economics Association投稿中)この指標は米国では広く使用されているが、日本人を対象にした調査はまだ行われていない。12年度の調査対象は学生であるが、そこでの結果をふまえてFurnham Scaleを日本の多重債務者用にアレンジしたいと考えている。 研究実績の第三は、まだ進行中であるが、「沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会」での多重債務者の聞き取りである。現段階では多重債務者の関心事が、取り立て行為の停止、自己破産や調停に対する手続きの不安及びその費用の捻出、連帯保証人への波及の程度、ブラックリストへの搭載による不利益等、経済的な事柄に集中している。現在は主として、法的な問題解決にどのような支援が可能かを模索中であるが、人間的な信頼関係を築きつつ、家族問題の聞き取りを予定している。
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