研究概要 |
本研究の目的は,多重債務者の現状を分析することにより,その問題解決にどのような社会的支援が必要かを検討することであった.平成13年度の研究実績の第1は,前年から続いている「沖縄ククレジット・サラ金被害をなくす会」に相談に訪れた多重債務者(N=988)の調査を終えたことである.さらに第2に,特定調停あるいは自己破産を申請予定である「特定調停勉強会」,すでに申請した人の集まりである「あしたの会」へ訪れた多重債務者にも,アンケート調査をおこなった.その結果,以下のことがわかった. (1)多重債務問題は特に低所得者層にとって,構造的に発生する可能性の高い生活リスクになっている. (2)多重債務の原因となった借金理由は,生活費不足,保証人名義貸し,営業資金の順となっている.また,各借金理由には年代別,ジェンダー別の特徴があり,その特徴にあわせた消費者教育や消費者啓発が必要となる. (3)多重債務世帯は,金銭問題以外にも,失業,低所得,不十分な子供の教育,住宅問題,健康問題,家庭不和等の問題をかかえている.また,健康保険や国民年金への未加入も含め,社会のメインストリームから排除される状況がみられる. (4)低所得者対象の多面的支援として住宅政策,教育アクセスの平等化,生活保護の柔軟な適用,杜会的ネットワークの充実,雇用確保,低利融資へのアクセス等が国民の生存権,ナショナルミニマムとして保障されるべきである. これらの結果は,日本消費者教育学会で「多重債務者への杜会的支援に関する研究」について報告し,さらに同学会へ論文を投稿している.
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