本研究では、日常生活動作について動作中のいくつかの計測指標を同期させて総合的に捉えるシステムを構築し、次の項目を明らかにすることを目的とした。 1)動作パターンの詳細や動作負担について多角的に明らかにすること。特に生活機器の負荷や位置が変化した条件での操作パターンの変化や操作戦略の変化、あるいは居住空間形状や床面が変化した条件での移動時の動作パターンの変化や心理的影響に注目する。 2)これらの基本動作データをもとに、機器や空間などの設計データ等へ応用する際の適用範囲、許容誤差、変換方法等を明らかにすること。 このうち動作パターンおよび動作負担については、ドアやキャビネットの開閉を想定した上肢による押引動作を対象とし、条件の違いによる負担の大きさを、様々な身体部位の姿勢や筋緊張等の因果関係から検討した。各設定高さにおける最大力発揮時と通常操作時の作用点移動量の違いから身体負担度を比較した。特に、性差および年齢差に注目した。まず、高位置での操作に年齢による差異が認められた。これは上肢のみでの操作が難しくなった場合の姿勢保持の柔軟性が高齢者で低下していることが起因すると考えられる。また、腰部より低い位置での操作に性差が見られた。これは作業持続力、背筋力等の差異による影響と考えられる。これらの結果から、負担評価における作用点の有効性が明らかとなった。また、床反力と動作分析を用いたつまずきや転倒に関する室内歩行実験でも、本システムを利用することによりそのメカニズムの一旦を明らかにすることができた。
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