研究概要 |
兵庫県南部地震による死者の多くが,「老朽化」した木造家屋の倒壊などによる窒息死と言われている。「老朽化」は,日光・熱などによる長期間における強度変化(物理化学的変化)である「老化」と腐朽菌による腐朽や白蟻等による食害(生物劣化)「朽」とに分けて考えるべきである。木材の「老化」の進行は遅いのに対し,「朽」の進行は速く,またそれに伴う強度低下も大きい。従って,先ず腐朽を制御することが木材保存には重要である。腐朽は腐朽菌の分泌する酵素の作用で木材の細胞組織構造が崩壊する現象である。このことから,腐朽菌をどのように防御・抑制するかが重要な研究項目である。 本研究では腐朽対策への展開を前提に,フルオロアルキル基を有する各種のオリゴマー類を合成し,木材表面に撥水性を付与して水分を制御することで長期にわたり腐朽を抑制することを目的とし,木材モデルとしてセルロースフィルムの処理を行った。その結果,(1)シランカップリング剤構造をもたせることで,非常に優れた撥水・撥油性を表面に付与することが出来た。 中でも,アンモニウムやホスホニウムのようなカチオンセグメントを有するコオリゴマー類は,上記の撥水・撥油性のみならず,(2)優れた抗菌(殺菌)活性をもち,(3)白蟻にも殺虫効果を示す事がわかった。 さらに,シランカップリング構造を持たせるなどにより,(4)表面固定化型にすることでVOC問題を引き起こさないなどの要求を満たす改質が可能になる事を明らかにした。 現在,より効率的な木材の腐朽制御剤(改質剤)の開発を続行中である。
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