研究概要 |
木材保存には,腐朽を制御することが重要である。腐朽は腐朽菌の分泌する酵素の作用で木材の細胞組織構造が崩壊する現象である。この事から,腐朽菌をいかに防御・抑制するかが重要な研究項目である。本研究では腐朽対策への展開を前提に,フルオロアルキル基を有する各種のオリゴマー類を合成し,木材表面に撥水性を付与して水分を制御することで長期にわたり腐朽を抑制することを目的とし,木材モデルとしてセルロースフィルムの処理を行った。 その結果,(1)シランカップリング剤構造やブロック化イソシアネート構造をもたせることで,ガラス・セルロース・ポリエステルなど多くの表面に非常に優れた撥水・撥油性を表面に付与することが出来た。 アンモニウムやホスホニウムのようなカチオンセグメントを有するコオリゴマー類は,上記の撥水・撥油性のみならず,(2)黄色ブドウ球菌などに対し優れた抗菌(殺菌)活性をもち,中でも,ホスホニウムセグメントを有する場合には,(3)オーレオバシディムなどに対し防カビ性を発揮し,一方,アンモニウムセグメントを有する場合には(4)白蟻に殺虫効果を示した。 さらに,シランカップリング構造やブロック化イソシアネート構造を持たせることにより,(5)表面固定化型にすることでVOC問題を引き起こさないなどの要求を満たす改質が可能になる事を明らかにした。 実際に木材を用いて腐朽制御剤について検討し,ホスホニウムセグメントを有する含フッ素ブロック化イソシアネートオリゴマーは優れた腐朽制御効果が認められた。
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