研究概要 |
廃羊毛繊維のサクシニル化による吸水性の付与を最終目的として、前処理によるサクシニル化の反応効率の向上と生成物の吸水性の向上を本研究の目的とした。サクシニル化の反応効率を上げるための前処理として、羊毛繊維の還元による可溶化を検討した。この結果、水酸化カリウムでpH11に調整した4%チオグリコール酸水溶液中、30℃で24時間還元することにより、GPC分析による数平均分子量が15,000〜16,000の水溶性の還元羊毛を得た。この還元羊毛の水溶液をpH8.0に調整し、無水コハク酸を加えて、均一系でサクシニル化したところ、無水コハク酸の付加率が20〜40%の還元/サクシニル化ケラチン誘導体を得た。従来の不均一系におけるサクシニル化に比べて、この付加率は著しく高く、反応効率を大きく高めることができた。得られた還元/サクシニル化ケラチン誘導体は水溶性であり、試料中のチオール基が再び空気酸化されて容易に不溶化することもなかったため、ジエポキシド化合物を用いて再度架橋化し不溶化することを試みた。架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを、触媒としてチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いてエタノール中で、種々反応条件を変えて架橋化による不溶化を試みた。この結果、水に不溶であるが、自重の23倍重量の水を吸水するケラチン誘導体を得ることができた。 この他、サクシニル化の前処理として塩酸による部分加水分解についても検討した結果、自重の20倍および29倍重量の吸水量を示す部分加水分解/サクシニル化羊毛および同羊毛粉末を得ることができた。
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