サクシニル化による廃羊毛への吸水性の付与を最終目的として、還元および部分加水分解が羊毛のサクシニル化の反応効率とサクシニル化物の水に対する特性に対して及ぼす効果について検討した。サクシニル化の前に、塩酸で羊毛繊維および羊毛粉末を部分加水分解し遊離のアミノ基を増加させると羊毛の反応性は向上し、サクシニル化のみを施した場合に比べ、高い付加率の羊毛を得ることができた。未処理羊毛繊維の吸水量が4g/g・woolであるのに対し、部分加水分解後サクシニル化した繊維の吸水量は20g/g・wool、同粉末では29g/g・woolであった。これらの試料の吸水量は無水コハク酸の付加率と直線関係にあり、このことは試料の吸水性能がサクシニル化によって導入されたカルボキシル基に大きく依存することを示唆している。2-メルカプトエタノールによる還元処理の効果はさらに大きく、還元後サクシニル化した羊毛繊維の吸水量は最高39g/g・woolであった。これらの処理の吸湿性への効果を検討した結果、部分加水分解あるいは還元処理のみではその効果は認められなかった。一方、これらの前処理とサクシニル化を組み合わせて行った羊毛繊維は、65%R.H.以上の中・高湿度条件下において未処理羊毛より著しく高い水分率を示すことが明らかとなった。さらに、未処理羊毛中に含まれる不凍水量は0.33g/gであったが、部分加水後サクシニル化した羊毛の不凍水量は0.49〜0.57g/gと顕著に増加した。他方、部分加水分解のみの処理でも不凍水量は0.44g/gに増加し、用いた塩酸の濃度の高いほど不凍水量は増加した。
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