本年度は温熱環境が日中の活動量及び夜間睡眠へ及ぼす影響を厳しい環境条件の夏期に測定し、昨年度の冬期(高齢女性7名)の測定結果と併せて比較、検討した。 被験者には農作業従事高齢者7名(男性4名、女性3名、平均年令75.1歳)について屋外作業が厳しい夏期を選び、48時間連続して活動量の測定を行った。又、同時に被験者の周囲気温、湿度を連続測定し、24時間中の総活動量や農作業、家事、睡眠など様々な生活行動中の活動量及び所要時間を算出するとともに、総活動量に影響を及ぼす要因を導き出し冬期の測定結果と比較検討した。さらに、温熱環境が高齢者の日中の活動量や睡眠に及ぼす季節的影響について検討した。 夏期の農作業者は昼食を挟んで午前と午後に活動量の山が見られるM型を示す。又、全員が昼食後1〜2時間昼寝を行っており、冬期測定者と大きい違いを示す。また、農作業者は季節的な影響から起床時刻が早く、早寝早起きの習慣がみられる。しかし、1日の総活動量には両群間で大差なく、性別や作業内容の別なく主体となっている作業(家事、農業、外出など)の活動量が多い者は総活動量も多くなり、行動の種類に関係なく日中活動的に過ごすことが1日の総活動量の増加に繋がっている。 夏期の農作業時では被験者の周囲気温が40℃付近にまで達している例が多く、日中はかなり高温環境に暴露されている。温熱環境が生活行動に及ぼす影響は日中よりも夜間睡眠時の方が大きく、寝室の気温と起床時刻、湿度と活動量(体動などによるもの)との間にはr=0.7近くの強い相関関係が認められた。睡眠中の体動と睡眠深度との間には高い関連性があり、29℃、75%にも上る夏期の寝室内温湿度では睡眠の質の低下を来している。冬期寝室の平均気温は11.5℃とかなり低く、6℃前後の室温で眠っている者もあり、高齢者にとって危険な温熱環境で生活している者が多いことが明らかにされた。
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