本研究では、(1)家事活動と同様な時間的要素を持ち、年をとっても本人の意思で継続して行うことができる農作業について農作業専従者と家事専従者との活動量の共通点と相違点を明らかにし、次いで(2)温熱環境条件が睡眠や日中の活動量に及ぼす影響について測定を行った。 (1)農作業専従者7名(男性4名、女性3名)家事専従者8名(女性)について、48時間中の活動量をアクティグラフで連続記録した結果、1日の総活動量には両者の差は認められなかった。家事専従者では、総活動量と家事活動量、外出活動量とは強い正の相関関係があるが、外出活動量と家事活動量とは相拮抗しあい、両者のいずれかが1日の総活動量を規定する要因となっていた。農作業専従者では総活動量の多い者は農作業量も多く、男性にその傾向が強い。両者の活動量に表れる相違点は殆どなかったが活動開始時刻に差があり、農作業従事者では早寝早起きの傾向があった。しかし、高齢者全体では75歳頃までは活動量にあまり差はないが、75歳を境としてそれ以降は加齢とともに活動量の急激な低下が認められた。 (2)温熱環境の実態測定は夏期(農作業専従者)と冬期(家事専従者)に行った。その結果、夏期の農作業時には40℃に達する高温環境になる例が多く、体温調節機能の限界に達し熱中症の危険性が示唆された。冬期もかなり低温環境にあり、夏期、冬期ともに基準値を大きくはずれていた。温熱環境が行動に及ぼす影響は睡眠時に多く表れ、とくに睡眠中の活動量(寝返りなどの体動によるもの)が多くなり、高湿と結びついて非常に寝苦しい状態となり、寝室の気温は睡眠中の活動量と、湿度は睡眠時間や起床時刻との間に高い関連性が認められた。しかし、睡眠時の影響に較べて日中の行動には気温・湿度との関連性はあまりなく、本人の意思と努力によって活動していることが窺え、高齢者の温熱環境の改善の必要性が示唆された。
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