1.本研究は、これから親になる世代である青年期男女が、次世代を健全に育成するための資質である養護性をいかにして獲得していくかについて、検討することを目的としている。 2.まず、「養護性」および近接する概念である「親準備性」「育児性」「次世代育成性」についての先行研究を検索し、整理した。 3.子どもを理解する一方法として自分自身の子ども期を回想することの有効性について、短期大学女子学生を対象とした質問紙調査により検討した。その結果、子ども期を回想した後には、概して、子どもに対する感情は若干良い方向へと移動する傾向が認められた。特に「子どもの相手をするのはわずらわしい」などのマイナス項目に対して子ども期を回想後にはそれを否定する回答が大幅に増えていたことから、子ども期を回想することは、青年たちが改めて「子ども」をわが身に引き寄せて考え、それまで無自覚的に漠然と持っていた「子ども」に対する多少のマイナス感情を打ち消したり緩和する効果を持つといえるようである。そして、今後自分がおとなとして子どもと良い関係を形成するには、子どもの目線で子どもと関わることや、親がけじめをつけてしっかりとしつけることの重要性への「気づき」が促されたものと思われる。しかし、回想後にも子どもに対する感情に変化の見られない者も存在し、それらの青年たちが養護性をどのように獲得していくかについては、今後の課題として残されている。 4.保育体験実習は保育教育において有効であることは先行研究の指摘するところであるが、体験実習の受け入れ側である幼稚園・保育所の保育者側から見たときの問題点・改善点について検討することは、青年期の養護性獲得に向けての大きな示唆を得ることが出来ると期待される。現在は、幼稚園・保育所の保育者を対象として質問紙調査により資料収集を行っている。
|