1.本研究は、これから親になる世代である青年期男女が次世代を健全に育成するための資質である養護性をいかにして獲得していくかについて検討することを目的としている。 2.新『学習指導要領』において家庭科の保育領域は一層充実されたが、養護性の獲得を教育課題として見たときに、高等学校家庭科の保育領域の学習実態について把握しておくことは重要である。そこで、長野県における公立・私立の全高等学校の家庭科教員を対象に調査を実施した。その結果、「保育領域の指導は得意だ」と回答する教員は「保育を学ぶ意義」を重視する傾向が認められたことから保育領域の「ねらい」を明確に捉えていることが伺えた。それゆえに、そのような教師は生徒の興味・関心を引きつけることができると考えることができる。したがって、保育教育に対する杜会の今日的要請に応えるうえで保育領域の「ねらい」を明確に認識することが教師に求められるといえるだろう。 3.わが国の子どもたちは赤ん坊や高齢者と、ふれあう機会が少なくなっている。一方、隣国の中国では20数年来「一人っ子政策」を採用している。これらの状況が子どもに及ぼす影響について探る観点から、小学生・中学生を対象に養護性についての調査を行い比較検討した。その結果、子どもや高齢者が困っている場面では、日本の子どもは積極的に助けようとするポジティブ反応が中国の子どもに比べて少なく、躊曙や傍観が多かった。拒否などのネガティブ反応は両国とも中学生男子に2割程度あり、両国間に差はなかった。したがって、中国の子どもはポジティブ反応についてはより積極的なかかわり方を示し、日本の子どもは消極的なかかわり方である傾向がうかがえる。
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