本研究は、これから親になる世代である青年期男女が、次世代を健全に育成するための資質である養護性をいかにして獲得していくかについて検討することを目的としている。 1.子ども理解の一方法として自己の子ども期を回想することの有効性について大学生を対象として検討したところ、回想後には子どもに対する感情は若干良い方向へと移動する傾向が認められた。特にマイナス項目に対して否定する回答が大幅に増えたことから、漠然と持っていた子どもに対する多少のマイナス感情を打ち消す効果を持つといえよう。 2.児童・生徒を対象にイラスト画を提示し、その自発反応を手がかりとして、幼児をどのように捉えかかわろうとしているかについて探った。幼児が困難や失敗に遭遇している場面では、小学生は「助けてあげる」などのストレートなプラス反応が多いが、発達に伴い減少し躊躇や傍観的な態度が増える。幼児からの友好的接近場面では、中学生・高校生は「断る」「逃げる」などのマイナス反応が2割あり男子に多い。さらに大学生では拒否的なマイナス反応は3〜13%と少なく、子ども好きが7割を占め女子に多いが、子ども嫌いは7%いて性差は認められない。「一人っ子政策」を採用している中国の小学生・中学生の場合には、子どもや高齢者が困っている場面で積極的に助けようとするプラス反応が日本の子どもに比べて多く、拒否などのマイナス反応は中学生男子に2割程度あり日本と中国の両国間に差は認められない。 3.家庭科教育において保育体験学習が行われることは一般的になってきたが、受入側である幼稚園・保育所側の意見を探ったところ、94%の園は受入経験があり、教育効果として「子どもを好きになる」「保育の重要性を理解する」「自分自身について考える」「子どもの発達を理解する」の回答が多く、「親の役割を理解する」の回答は相対的に少なかった。
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