研究概要 |
平成12年度は、防護マスクでの顔面冷却により、脳温の上昇抑制を行い、全身の発汗量を抑制し、衣服内気候と着用感の改善を図ることを目的に、保冷具付きマスクの試作を行い、実験室での着用実験を行った。保冷具は、フイールドでの適用を考慮に入れ、ライオンKKの協力により、嗅覚への刺激のない香料無添加の「冷えピタ」を提供してもらい、それを、スリーエムヘルスケアKKの協力でマスク(3M.8812)に接着してもらい、保冷具付きマスクとした。 被験者は健康な女子学生6名とし、環境条件は実際の農薬散布作業時を想定し、気温28℃、相対湿度60%の人工気候室で、8〜9月にかけて行った。マスク以外の着用被服は、半袖メリヤスシャツ(綿100%)、半ズボン下(綿100%)、農薬散布用防除衣上下(ゴアテックス製)、ソックスおよび運動靴とした。実験は、マスク以外の被服を全て着用後、15分間の椅座安静の後、保冷具なしのマスク(A)か保冷具付きマスク(B)のいずれかを着用して、自転車エルゴメーターによる運動を15分間行った後、5分間の安静をはさみ、これを3回繰り返した。A、Bのマスクの着用はランダムに行った。測定項目は、直腸温、鼓膜温、心拍数、皮膚温(9部位)、マスク内温湿度、衣服内温湿度(胸.マスク内)、発汗量および着用感(温冷感、湿潤感、快適感)の主観申告である。 実験の結果は以下の通りであった。1)直腸温と衣服内温度はBの方が有意に上昇が抑制された。2)心拍数と鼓膜温はBの方が上昇が抑制されたが、有意差はなかった。3)発汗量および着用感にはA,B間に差はみられなかった。今回の実験ではマスクの冷却効果が顕著に見られなかったので、次年度は保冷具の「冷えピタ」のマスクへの接着方法を工夫して、より冷却効果が上がるマスクを再度試作し、着用実験を行う予定である。
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