本研究は植物性食品のテクスチャーに及ぼす温度効果と圧力効果を検討し、加熱の前処理による硬さの変化とその機構および硬さの最適化の方法を構築することを目的としたものである。平成12年度は試料をダイコンとし、60℃で加熱処理および加熱後に放置した試料と400MPaで加圧処理および加圧後に放置した試料を99.5℃で加熱し、テクスチャーを官能検査により評価し、嗜好特性に及ぼす熱と圧力による加熱前処理の影響を比較した。その結果、同一加熱時間においては圧力の方が熱よりも前処理による硬化の影響が緩やかであった。前処理後の各試料について成分分析および細胞壁多糖類の分析を行った。細胞壁多糖類の分析をする際はアルコール不溶性画分を調製した。60℃で予備加熱した試料と400MPaで加圧した試料のペクチンを分画した結果、未処理に比べ予備加熱では水溶性ペクチンの減少がみられ、予備加熱、圧力処理共にヘキサメタリン酸可溶性画分の増加が認められた。ペクチンのエステル化度を測定した結果、未処理よ圧力処理で低下し、予備加熱処理でさらに低下した。水分はほとんど変化がみられなかった。以上の結果、60℃で加熱処理および加熱後に放置した試料と400MPaで加圧処理および加圧後に放置した試料ではテクスチャーにやや違いがみられ、硬化に対して、本条件では圧力より温度効果の方がやや大きいこと、それに対応してペクチンの変化もやや予備加熱の方が明らかであることがわかった。なお、本実験において細胞壁多糖類および水分に関する測定は硬化の機構を考える上で重要である。そのため凍結乾燥装置および水分活性測定装置を新規購入した。なお、申請時は現有の超高圧装置の主要な部分が老朽化のため、その部分を新規に購入することを希望したが、研究の過程において部分的修理を行いつつ実験を行うことが可能であったため、現在ない前述の装置を優先的に購入し、研究を進めた。
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