平成12年度において植物性食品のテクスチャーに及ぼす温度効果と圧力効果を検討するためにダイコンを試料として加熱の前処理による硬化を圧力と加熱処理で比較した。常温で400MPaの加圧処理および加圧後に放置した試料と60℃で加熱処理および加熱後放置した試料をさらに99.5℃で加熱し、テクスチャー特性を官能検査および機器測定により測定した結果、圧力処理および60℃加熱処理ともにその後の加熱においては軟化を抑制し、これらの前処理によって硬化が起ることが示された。またその硬化の程度は60℃加熱の方が圧力処理よりも大きかった。これらの前処理によって起る硬化の機構を解明するために前処理後の各試料について成分および細胞壁多糖類の分析を行った。平成13年度も引き続き一連の実験を行い、未処理に比べて60℃加熱試料では水溶性ペクチンの減少がみられ、圧力処理ともにヘキサメタリン酸可溶性画分の増加が認められた。ペクチンのエステル化度は未処理に比べ圧力処理で低く、60℃加熱でさらに低下した。水分はいずれも変化がみられなかった。ペクチン各画分の金属イオンを測定した結果、圧力処理、60℃加熱ともにヘキサメタリン酸可溶性画分で増加がみられ、塩酸可溶性画分で減少する傾向がみられた。タンパク質は塩酸可溶性ペクチンと0.2%NaOH可溶性画分に多く存在したことからペクチン中のタンパク質はセルロース等と結合していることが示唆された。全体として圧力処理では各画分1g中のタンパク質が減少、60℃加熱では増加する傾向がみられた。AIS1g中でみるといずれの処理もほとんど変化がみられなかった。0.2-17.5%NaOH不溶タンパク質の測定を行った結果、60℃加熱または圧力処理および処理後の放置によってタンパク質の溶解性が変化しており、タンパク質の不溶化が硬化に関与していることが示唆された。
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