生活環境中のアルデヒド類などをはじめとする酸化ストレス原因物質は体内酸化を増加させると考えられる。一方、ビタミンC、すなわちアスコルビン酸は抗酸化ビタミンとして直接的に関与しており、十分量のアスコルビン酸摂取は体内抗酸化に非常に役立つものと考えられ、体内での酸化が原因の一つとなるような疾患類の発症を抑制すると期待される。国民病の一つといえるようになった糖尿病を特に取り上げ、糖尿病において酸化ストレスを含めた生活環境由来化学ストレスをうけた場合の健康へのリスクを動物試験を行って明らかにすることを目的とした。 実験用小動物へストレプトゾトシン(STZ)を50mg/体重Kgとなるように腹腔内投与して糖尿病を発症させ、さらに生活環境由来化学ストレスを与えるもの(ビスフェノールAなど)を与えてその影響を正常動物と比較し、検討した。また、アスコルビン酸投与量を変化させて糖尿病動物に与え、アスコルビン酸投与量の違いによる体内酸化の程度の差も併せて調べた。 その結果、アスコルビン酸を比較的多量摂取することにより、糖尿病動物の体内酸化の程度が抑制されることを明らかにした。さらに、ビスフェノールAなどの生活環境由来化学物質を投与すると体内酸化の程度が亢進することを示した。以上のことから、糖尿病動物は正常動物よりも化学ストレスの影響をより受けるものと考えられ、抗酸化ビタミンであるアスコルビン酸の投与はその影響を軽減するものと思われる。したがって、現在の我国のビタミンC、アスコルビン酸の栄養所要量は100mgと策定されているが、糖尿病の場合は摂取量がこれよりも少なくならないようにする必要がある。
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