鶏卵白タンパク質の54%を占め栄養価が高くかつアレルゲン性の高いオボアルブミン(H-OVA)のアミノ酸配列はウズラ卵白オボアルブミン(JQ-OVA)と88.9%の相同性があり、H-OVAのIgG抗体と結合するエピトープ構造は94.8%もの高い相同性が認められた。また鶏卵白タンパク質の中で最もアレルゲン性の強いオボムコイド(H-OM)の一次構造はウズラ卵白オボムコイド(JQ-OM)と75.8%の相同性があり、H-OMのIgGエピトープは73.5%の相同性が認められた。しかしJQ-OVAの抗H-OVA-ウサギ血清IgGとの結合性をInhibition ELISA法で測定するとH-OVAの6.8%であり、JQ-OMの抗H-OM-ウサギ血清IgGとの結合性はH-OMの僅か0.OO4%であった。これはわずかのアミノ酸残基が置換しても抗体との結合が著しく低下することを意味する。 鶏卵アレルギー患者の代替食品としてウズラ卵を用いた料理を作り、食味および抗原性について検討した。ウズラ卵と鶏卵で調製した試料4品目について2点嗜好試験法で官能検査をした。卵ボーロ・カスタードプディング・茶碗蒸は、色のみ鶏卵試料が有意に好まれた(P<0.001、P<0.01、P<0.01)。しかし香り・味・口触り・総合評価で差は認められなかった。かき玉汁は、色・香りについては鶏卵試料が有意に好まれ(P<0.001、P<0.05)、その他の項目で差は認められなかった。ウズラ卵において色の評価が低かったのは日頃食している鶏卵製品よりウズラ卵の黄色が薄かったためと考えられる。またかき玉汁は温かいためウズラ卵の香りが強調され好まれないことが分かった。ウズラ卵を用いた卵ボーロ・カスタードプディング・茶碗蒸・かき玉汁の抗原性をInhibition ELISA法で測定したところ、それぞれ鶏卵の0.031、0.017、0.013、0.003%と非常に低い値であった。 以上の結果から、鶏卵アレルギー患者の代替食品としてウズラ卵の利用は十分可能と思われる。
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