研究概要 |
1)カードランや澱粉などの高感度示差走査熱測定(DSC)を行い、冷凍・解凍にともなうゲル中の自由水、糖鎖への結合水の質的、および、量的変化に関する知見を得た。カードランゲルについては、冷却速度と解凍に伴う離水率の関係を明らかにした。たとえば10%(W/W)カードランゲルの場合、0.5K/minと0.05K/minの冷却速度で-20℃まで冷却し、その後0.5K/minの昇温で解凍した場合、それぞれの離水率は32%,40%となり、冷却速度の重要性が示唆された。さらに、この冷凍・解凍を経たカードランゲルの小角X線散乱測定を行った。この測定により得た分子レベルでの構造変化とゲルの冷凍・解凍にともなう離水率などの物性変化との相関について検討を加えた。一方、米飯の場合は、コメ細胞中の糊化澱粉の老化と水和水の関連について検討を加えた。 2)より複雑な食品中における多糖ゲルの挙動を知るために、抗体を用いた免疫化学的な方法でゲル部分を観察する方法を開発した。タケノコの場合、可食部位の細胞壁多糖成分の内、アラビノキシランが特に水と相互作用をしており(水和)、細胞壁の柔らかさの由来になっていると言われている。そこで、抗アラビノキシラン抗体を調製して、タケノコの細胞壁中におけるゲル化多糖(アラビノキシラン)の組織中における分布を蛍光顕微鏡を用いた免疫化学的な方法で観察したところ、やわらかい先端部における細胞壁に局在することがわかった。このことにより、タケノコの部位とか、やわらかさの異なるタケノコの冷・解凍に伴う物性・構造変化をタケノコ細胞壁中のアラビノキシランゲルの局在性との関連で解析することが可能になった。
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