1)カードランゲルの示差走査熱測定(DSC)を行い、冷・解凍にともなうゲル中の自由水、糖鎖への結合水の質的、および、量的変化に関する知見を得た。その結果、ゲル中の離水率と冷却速度の重要性が示唆された。さらに、この冷・解凍を経たゲルの小角X線散乱測定を行い、分子レベルでの構造変化とゲルの冷・解凍にともなう離水率などの物性変化との相関について検討を加えた。2)ジェラン/NaCl添加系について、シングルチェーンからダブルヘリックスの転移はDSC、SAXSともに観測された。塩の添加量を増加させるとDSCカーブにおいて新たに高温側にピークが出現したが、それに対応するSAXSの転移は観測されなかった。SAXSの観測領域よりも大きいディメンションでの構造の転移が推察された。この転移はゲル化する系にみられ、ゲル形成に深く関与していると考えられた。3)抗体を用いた免疫化学的な方法でゲル中の多糖分子鎖を染色して電子顕微鏡観察する方法を開発した。その結果、カードラン-デンプン混合ゲル中のカードランのドメイン構造の局在性を明らかにするとともに、冷・解凍にともなうドメイン構造の変化をとらえることができた。4)米飯の冷・解凍にともなう劣化のメカニズムを、DSCを用いて研究を行い、コメ細胞中の糊化澱粉の老化と水和水の関連について検討を加えた。冷凍保存することにより老化を防止することができるが、DSCを用いてこの現象を定量的に解析ることができた。5)抗アラビノキシラン抗体を調製して、タケノコの細胞壁中におけるゲル化多糖(アラビノキシラン)の組織中における分布を蛍光顕微鏡を用いた免疫化学的な方法で観察したところ、やわらかい先端部における細包壁に局在することがわかった。
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